タコと海女が描かれた浮世絵には、しばしば性的な表現が見られる。タコが海女にからみつく構図は明治期まで受け継がれ、中でも19世紀初めに葛飾北斎が描いた春画「蛸(たこ)と海女」が有名だ。一方、同時期には性的表現を離れ、単に両者をセットとして登場させる構図も現れる。「タコが、とってつけたように描かれている作品もあるんです」と縣(あがた)拓也学芸員。
歌川国芳による本作は、腰みのを着けた海女の両脇に、控えめにタコの姿が。ぬれた髪がエロチシズムを感じさせるが、着衣で、直接的な表現はない。「絵師たちが性的な視点よりも、海女の神秘性や美しさ、漁の技術に注目するようになった表れなのでしょう」