ころころと転がる色鮮やかな色玉は、元永定正(1922~2011)が描く特徴的なモチーフだ。
元永は三重・伊賀上野出身。故郷から兵庫・神戸に出てきたとき、摩耶山の頂上に輝く色とりどりのネオンが宝物に見えたという。そこから着想し、「寶(たから)がある」という作品(1954年ごろ)で描いた丸形が色玉の始まり。その後、絵本や絵画、立体作品にも登場していく。
本作は晩年の作品だ。「『新しいアートはいつも、アートの世界の外からやってくる』との元永の言葉には、未知への挑戦を感じます」と同館学芸員の藤本奈七さん。赤と白の物体が生き物なのか無機物なのか、色玉は出ているのか吸い込まれているのか――想像させる余地を残す。