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「作品」

元永定正展(清須市はるひ美術館)

「作品」
1966年、油性合成樹脂塗料・キャンバス、三重県立美術館蔵

 画家の元永定正(1922~2011)は、10代のころ漫画家を志した。郵便局員や社交ダンス講師などの職を経て、抽象画家に転向。55年、関西の前衛美術集団「具体美術協会」を主導した吉原治良(じろう)の誘いで同集団に参加し、「人のまねをするな」との教えのもと、既成概念にとらわれない作品に挑んだ。

 本作は縦225×横182センチの大作。たらし込みという日本画の技法を油彩に取り入れた。周到なデッサンをしてから、キャンバスを斜めに傾け、絵の具を滴らせた。傾ける角度と絵の具が流れる偶然性とのバランスが、面白い形を生んでいる。

 「他人の評価を気にしがちなインスタ映えがはやる今、自由に描く元永の絵は私たちに強く訴えかける」と同館学芸員の藤本奈七さん。

(2018年9月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)