名古屋市美術館は、地元を中心に東海地方にゆかりのある作家の作品も収集している。
本作は、同市出身の洋画家・西村千太郎(1907~94)の風景画。描かれているのは、名古屋名所の一つ「納屋橋」だ。市内を流れる堀川にかかる橋で、13年に、現在のような鋼製のアーチ式に改修、近代的な印象の橋となった。
描かれた30年当時、橋周辺には電線が張り巡らされ、市電が走っていたが、西村は情感を損ねることを懸念したのか、それらを省き、洋館や煙突から上る煙などを描写。異国情緒ある雰囲気を演出している。保崎裕徳学芸員は、「パリの風景などを描いた洋画家の佐伯祐三に影響を受けた西村は、そのスタイルを名古屋に落とし込んだのです」。