本作(12月16日まで展示)に登場するのは、「源氏物語」宇治十帖後半のヒロイン、浮舟。滞在していた異母姉の中君(なかのきみ)の屋敷で匂宮(におうのみや)に襲われそうになる。傷ついた浮舟に、中君が絵物語を見せて慰めている。
この場面から、当時の姫君たちもこのように「源氏物語絵巻」を読んでいたことがわかる。女房たちは物語絵や屛風(びょうぶ)絵を参考に、どんな時にどういう和歌を詠めばよいのかを姫君に教育した。宮中の女性の恋愛指南書でもあったのだ。
また、右側にいる女房たちは、後年、物語の語り手になることを示している。「じつは『源氏物語』は光源氏や薫に仕えていた複数の女房が昔語りをしているという形をとっているのです」と学芸部長の四辻(よつつじ)秀紀さんは話す。