黎明(れいめい)期の洋画の啓蒙(けいもう)と普及に努めた浅井忠(ちゅう)(1856~1907)。本展では、留学先のフランスで描いた油彩画や水彩画のほか、帰国後に制作した図案、工芸品など118点を前後期で紹介。作風の変遷を見ることができる。
本作は、パリ郊外にある小村、グレーの牧場を描いた一枚。立ち並ぶ木々の葉は、ところどころ黄色に色づき、白い頭巾をかぶった農婦が手押し車を押している。渡仏前の日本で洋画排斥の動きや、画壇内の対立などに困惑していたとされる浅井。「留学によって、そういったしがらみから解放されたのか、滞欧期の作品の色調は明るく、美しい風景への感動が素直に表現されています」と主任学芸員の吉村有子さんは話す。