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「グレーの柳」

アール・ヌーヴォーの伝道師 浅井忠と近代デザイン(ヤマザキマザック美術館)

「グレーの柳」
1901年 京都市美術館蔵

 黎明(れいめい)期の洋画の啓蒙(けいもう)と普及に努めた浅井忠(ちゅう)(1856~1907)。本展では、留学先のフランスで描いた油彩画や水彩画のほか、帰国後に制作した図案、工芸品など118点を前後期で紹介。作風の変遷を見ることができる。

 本作は、パリ郊外にある小村、グレーの牧場を描いた一枚。立ち並ぶ木々の葉は、ところどころ黄色に色づき、白い頭巾をかぶった農婦が手押し車を押している。渡仏前の日本で洋画排斥の動きや、画壇内の対立などに困惑していたとされる浅井。「留学によって、そういったしがらみから解放されたのか、滞欧期の作品の色調は明るく、美しい風景への感動が素直に表現されています」と主任学芸員の吉村有子さんは話す。

(2018年12月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)