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「中ノ沢こけし」

愛蔵こけし(豊田市民芸館)

岩本善吉の孫弟子、瀬谷重治作(左)、その息子の幸治作
岩本善吉の孫弟子、瀬谷重治作(左)、その息子の幸治作

 異色の表情で目を引くのは、「たこ坊主」の愛称をもつ「中ノ沢こけし」だ。見開いた目や、目の回りの赤い彩色などが特徴と言われる。

 創始者は栃木出身の木地師・岩本善吉(1877~1934)。芸妓(げいぎ)屋の養子に入った時期があり、踊りが得意だった。遍歴後、22年に福島県猪苗代町の中ノ沢温泉に落ち着くと、こけしの制作を始めた。たこ坊主の顔は、善吉が逆立ちして踊った「逆さかっぽれ」の際に、股に挟む張り子に描いた顔がもとになったという説もある。

 「他人のまねを嫌う性格で、創意を加えて独自の型を作ったと言われています」と、愛知県・豊田市民芸館の内田美穂子学芸員。11系統ある伝統こけしの土湯系(福島)に含まれるが、遠刈田(とおがった)系(宮城)の影響も見られる構造や独自性から、系統独立を目指している。

(2019年2月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)