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「灯台(アンティーブ)」

空の情景(メナード美術館)

「灯台(アンティーブ)」
1954年、同館蔵

 季節や時刻によって表情を変える空は、いつの時代も画家たちを魅了してきた。今展では空の描写に注目し、作家の心情や制作背景を探る。

 本作は、ロシア出身のニコラ・ド・スタール(1914~55)の油彩画。パリで抽象画家として活動した後、具象画を描き始めた。特に水平と垂直による画面構成に関心を示す。54年に南仏に渡り描いた本作も、中央の灯台が目を引く構図だ。

 空が染まる様子は、「朝焼けではないでしょうか。画商宛ての手紙の中に、『日の出を描くため海辺で待っている』との記述が残されています」と学芸員の村石桃子さん。

 だが灰色の空は重々しい。待ち望んだ朝の光の中に、翌年自殺する画家の孤独や苦悩をも感じさせる。

(2019年2月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)