季節や時刻によって表情を変える空は、いつの時代も画家たちを魅了してきた。今展では空の描写に注目し、作家の心情や制作背景を探る。
本作は、ロシア出身のニコラ・ド・スタール(1914~55)の油彩画。パリで抽象画家として活動した後、具象画を描き始めた。特に水平と垂直による画面構成に関心を示す。54年に南仏に渡り描いた本作も、中央の灯台が目を引く構図だ。
空が染まる様子は、「朝焼けではないでしょうか。画商宛ての手紙の中に、『日の出を描くため海辺で待っている』との記述が残されています」と学芸員の村石桃子さん。
だが灰色の空は重々しい。待ち望んだ朝の光の中に、翌年自殺する画家の孤独や苦悩をも感じさせる。