フランスの素朴派画家アンリ・ルソー(1844~1910)も、空に魅せられた芸術家の一人だ。
風景画で知られるルソーは、パリ市の税関に勤めながら40代で絵を描き始めた。独学のため遠近法に狂いもあるが、幻想的な作風が晩年になって評価を得る。空を描く際は、飛行船やエッフェル塔など近代化を象徴するモチーフを度々登場させた。
本作はパリ郊外の工場地帯と推定される。目線を空へと誘うのが、ひときわ高い工場の煙突だ。「近代化により、空という未知の領域に人々の手が届き始めたことがうかがえます」と学芸員の村石桃子さんは話す。「空を見上げるように鑑賞してほしい」と、本作は壁の少し高い位置に展示されている。