わき出る「生」や「性」のイメージをおおらかに表現していた東アフリカ・マコンデの人々。しかし、1980年代以降は大胆な性表現がほとんど見られなくなったそうだ。「輸出資源でもあったため、表現を控えるようにタンザニア政府から要請が出されたようです」と水野恒男館長は話す。
1970年代にソンゲア・ゴスウェにより制作されたこの作品には、まだ自由な表現が見られる。男性から流れ出た、子どものような表情を持つ「卵」を、女性が手をのばして受け止めている。女性の上唇にはめられたリングは、現在は見られないかつての風習。多産の女性を表している。「我々にはなかなか考えつかない斬新な表現ですよね」と水野館長。「生き物すべてに通じる営み、自分たちや祖先の誕生の始まりを表すことで、子孫繁栄を祈願する意味があったのだと思います」