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「ゼロ次元 記録写真」

アイチアートクロニクル 1919-2019 展
(愛知県美術館)

撮影者不詳 1963年
撮影者不詳 1963年

 戦争や天災の混乱と復興に揺れた1940~50年代の愛知。55年には、名古屋市・栄に愛知県美術館の前身である文化会館美術館が開設され、芸術発信の拠点が築かれた。

 60年代以降、全国的な広がりをみせた「反芸術」や「概念芸術」「もの派」の動きが県内でも巻き起こる。既存の枠に収まらない、美術家集団による行動的な表現(ハプニング)が活気づいた。

 前衛絵画グループを母体とし、加藤好弘や岩田信市らが結成した「ゼロ次元」もその一つ。本作は、63年1月のパフォーマンス記録。「人間の行為をゼロに導く」というコンセプトのもと、栄の市街地を赤ちゃんのずりばいで行進する様子だ。学芸員の副田一穂さんは「日常空間に異物としてハプニングを投じることで『芸術とは何か』を社会に提議している」と話す。

(2019年4月9日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)