韓国写真界にドキュメンタリーの視点を持ち込んだ写真家、朱明徳(ジュ・ミョンドック、1940~)。本展は、愛知県高浜市のかわら美術館初の朱の本格展示だ。瓦のほか、屋根や家並みの風景画、写真などを収集してきた同館が所蔵する朱の作品63点を展示している。
本展のサブタイトル「帰れない故郷、扉の向こう側」を象徴的に表すのが本作。韓国南部の山麓にある海印寺の写真だ。門を通して向こう側の建物を撮り、現時点から過去の幻想的な寺院を見つめている。「故郷」をキーワードに写真を撮り続けてきた朱の代表作ともいえる作品だ。
学芸員の今泉岳大さんは「朱が言う『故郷』は『場所』であると同時に『時間』でもある」と話す。朱自身、黄海道(現北朝鮮黄海南道)で生まれたため、「故郷」に帰ることができない。