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「關門城 慶尚北道 聞慶 鳥嶺山」

朱明徳 帰れない故郷、扉の向こう側
(高浜市やきものの里かわら美術館)

1973年
1973年

 朱明徳が韓国のドキュメンタリー写真家といわれるきっかけとなったのが、1966年の「ホルト孤児院写真展」。米軍兵士と韓国人女性との間に生まれた孤児を撮影し、背景にある社会問題を提示した。しかし、軍事政権下の70年代以降、写真や映像が検閲の対象になると、朱の写真も社会批判と見なされるように。人物を撮影するのが難しくなり、朱の目線は風景に向かうようになった。

 本作は、韓国郊外の風景シリーズの中の一作。鳥嶺山の集落の写真だ。遠い目で見ているようなまなざしが表れている。「地方から人々が出て行く動きの中で、忘れ去られていくもの悲しさのようなものを表現しています」と学芸員の今泉岳大さんは話す。人物から風景に被写体が変わっても、ありのままの姿を写す朱の視点は変わらない。

(2019年5月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)