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桑原翠邦「古道少人行」

近現代の書 昭和・平成編(春日井市道風記念館)

制作年不明
制作年不明

 「現代書の父」といわれる比田井天来(ひだいてんらい)(1872~1939)は、1930年に東京で書学院を設立し、中国古典を直接学ぶことを説いた。金子鴎亭や手島右卿(ゆうけい)は、その教えを受け継ぎつつ、近代詩文書や少字数書といった新しい分野の書を開拓していった。

 一方、天来の弟子の中でも伝統的な書のスタイルを貫いたのは桑原翠邦(1906~95)だ。本作は、漢時代に確立した書体「隷書」で書かれた作品。「隷書」は上から押しつぶしたような扁平(へんぺい)な字形で、横画を波のようにはねた「波磔(はたく)」が特徴だ。現在は、紙幣でもよく目にする。学芸員の鈴川宏美さんは、「端正な字形と余白がとても美しい作品です。粘り強い線が素晴らしく、重厚感があります」と話す。翠邦(すいほう)は、72年から83年まで当時の浩宮さま(いまの天皇陛下)の書道教授を務めた。

(2019年6月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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