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「四十九日」

小松美羽展(一宮市三岸節子記念美術館)

「四十九日」

 鮮やかな色使いで神獣や守護獣などを描き続ける現代美術家・小松美羽(1984~)。大胆な筆致の中にも細密に描き込む作風の原点には、美術大学時代に学び、制作をしていた銅版画がある。

 本作は祖父の死を機に、20歳の時に制作した銅版画作品。魂がラクダのようなものに乗って、死後の世界へ旅に出る姿を描いている。先導するのは祖父の死の2年前に亡くなったペットのウサギ「ラビちゃん」の魂。ウシのような姿をしているのは地獄の門番で、道を通すのに適当でない者はのみ込んでしまうという。

 独創的な世界を表現した本作は、銅版画家としての代表作になるが、「ここにとどまらないという決意から、原版は作家が断腸の思いで切断しました」と学芸員の伊藤和彦さんは語る。

(2019年7月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)