少女や動物をモチーフに、型取りした石膏の凹部に樹脂を流し込んだ作品を制作する彫刻家・中谷ミチコ(1981~)。多摩美大を卒業後、独東部ドレスデンで7年間学び、帰国後は三重県を拠点に活動する。本作は、少女がカラスを抱きかかえると同時にとき放つ様子を表現。
粘土の原型を石膏で型取りし、固まると粘土をかき出して中を空洞にする。水彩で内側を着彩した手足部分には、透明樹脂を流し込んだ。黒く着色した樹脂を流したカラスは、凹部の深さによって色の濃淡が現れる。
空を飛び、重力にあらがいながら存在する鳥や、夢といったイメージを、いかに彫刻に置き換えるかを模索し、現在の作風にたどり着いた。「凹部の空白を樹脂で埋めて『ある』ことにするなど、不在と存在の間を行き来する作品です」と中谷は語る。