彫刻家・中谷ミチコ(1981~)は17歳の時、同・柳原義達(1910~2004)の彫像「犬の唄」=写真左は石膏原型=を見て、この道を志した。「お手本で呪縛でもある」という同作に、中谷は本展で改めて向き合ったという。
柳原の「犬の唄」は、戦争や自身に対する皮肉と抵抗を表現した裸婦像。独へのレジスタンス精神を歌い、普仏戦争後にパリで流行したシャンソンから名付けた。「犬がお手をするような服従のポーズを取りながらも、左手でお尻をつかんで立つ姿は自分自身だと感じた」と中谷は話す。
同じ題の中谷の彫刻=同右=は、犬にされた裸の女性を少女が支えている。粘土原型で型取りした石膏の凹部を彩色して、透明樹脂を流し込んだ。中谷は「二人とも私。柳原の影響から脱出しようともがく、ポートレートです」。