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柳原義達「犬の唄」/中谷ミチコ「犬の唄」

中谷ミチコ その小さな宇宙に立つ人(三重県立美術館)

(右)1950年(左)2019年
(右)1950年(左)2019年

 彫刻家・中谷ミチコ(1981~)は17歳の時、同・柳原義達(1910~2004)の彫像「犬の唄」=写真左は石膏原型=を見て、この道を志した。「お手本で呪縛でもある」という同作に、中谷は本展で改めて向き合ったという。

 柳原の「犬の唄」は、戦争や自身に対する皮肉と抵抗を表現した裸婦像。独へのレジスタンス精神を歌い、普仏戦争後にパリで流行したシャンソンから名付けた。「犬がお手をするような服従のポーズを取りながらも、左手でお尻をつかんで立つ姿は自分自身だと感じた」と中谷は話す。

 同じ題の中谷の彫刻=同右=は、犬にされた裸の女性を少女が支えている。粘土原型で型取りした石膏の凹部を彩色して、透明樹脂を流し込んだ。中谷は「二人とも私。柳原の影響から脱出しようともがく、ポートレートです」。

(2019年8月20日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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