三重県北部には、鯨船行事と呼ばれる祭りがある。ユネスコの無形文化遺産にも登録されている四日市市・鳥出神社の鯨船行事は、江戸時代後期から今日まで続いている。
捕鯨の様子を再現したこの祭礼では、中に人が入ったり担いだりして動き回るクジラの張り子を、練り歩く船の形の山車の上からモリで突く所作をする。その山車と張り子をかたどった土鈴が本作。郷土玩具として親しまれている。
四日市市や隣接する鈴鹿市など県北の臨海部は、伊勢湾の奥に位置するため浅瀬が多く、主に迷い込んだり打ち上げられたりしたクジラを取っていた。たまに得られる臨時収入による経済的な波及効果は大きく、海神からの贈り物として祭礼でクジラを祀り、感謝を捧げるようになったという。