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「リュート弾き」

カラヴァッジョ展(名古屋市美術館)

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 1596~97年ごろ 個人蔵
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 1596~97年ごろ 個人蔵

 16世紀末のイタリアに現れた天才画家カラバッジョ(1571~1610)。本展は、光と影の描写と生々しい写実表現でローマに衝撃を与えたカラバッジョ作品約10点と、その影響を受けた画家たちの作品約30点で構成する。

 本作は25歳ごろの初期作品。すでに圧倒的な画力を誇っていた。花瓶には部屋の窓が映り込み、少年の肌は白くなめらか。少し開いた口からは歌が聞こえてきそうだ。視覚のみならず、リュートは聴覚、みずみずしい果物や花は味覚と嗅覚、なめらかな指先は触覚と、「五感を刺激しようとしたのでは」と学芸員の保崎裕徳さんは話す。

 光の演出も巧みだ。左上から差し込んだ光が明暗のコントラストを際立たせている。

 画家は後半生、殺人を犯し逃亡生活を送りながら傑作をいくつも生み出していく。

(2019年11月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)