異国の地で「描くこと」と向き合い続けた画家・木村忠太(1917~87)。36歳で渡仏して以来、帰国したのは一度だけだが、フランス語は全く話せなかったという。画商らとのやり取りは妻が行い、自らは絵に専念した。80年代には、フランス政府から芸術文化勲章シュバリエを受章し、ニューヨークでも個展を開催。国際的に名が知られるようになった。
「光」を描きたかった木村は、苦闘の末、やっと満足できるような表現にたどり着いた。そのひとつが「六月の光」だ。白を効果的に用いて、彼の原点とも言える、南仏の光あふれる風景を見事に表現した。「まぶしい、きれい、と感動した気持ちが伝わってきます」と主任学芸員の吉村有子さん。会場では本作が一番最初に展示され、来場者を温かく迎えてくれる。