日本には「うつくしきもの」をつくり、愛(め)でる文化が息づく。木材を組み合わせてつくる「指物(さしもの)」もその一つ。部材の一方に突起の枘(ほぞ)を、もう一方に枘穴を施し、差し込むことで、金釘を使わずに丈夫で流麗な意匠を生む。この手法は「接手(つぎて)」と呼ばれ、種類は数多い。
本作は、人間国宝の木工芸家・須田賢司が手がけた。5種類の木を使い、蓋(ふた)はタモ材の杢目を引き立たせるため、黒色の拭漆(ふきうるし)で仕上げている。使用した接手は「留め形隠し蟻(あり)形接ぎ」「包み小穴」「本核矧(ほんざねは)ぎ」「留め形隠し三枚接ぎ」。本展では、蓋と中箱の構造がわかる模型も並べ、緻密(ちみつ)な仕事ぶりを紹介している。
「欧米では、高い技術を外から見せることでものの価値を高める意識があるが、あえて技を隠すところが日本特有の感性」と須田さん。