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「松葉楼粧ひ 実を通す風情」

黄金期の浮世絵 歌麿とその時代展(パラミタミュージアム)

1799(寛政11)年ごろ 大判錦絵 雲母摺
1799(寛政11)年ごろ 大判錦絵 雲母摺

 小首をかしげて筆を執るのは、江戸・吉原の遊女粧ひ。恋文なのだろうか。にやりとほくそ笑み、ゆるんだ口もとからは舌をのぞかせている。 

 なんともつやっぽい女性の姿を捉えた本作は、美人画を得意とした浮世絵師、喜多川歌麿(1753?~1806)による美人大首絵。それまで多くの絵師が描いてきた全身像ではなく、上半身、特に顔を大きく配することで、女性の細かなしぐさや表情、結った黒髪の色つやまでがわかるようになった。さらに、光沢のある雲母摺を施したシンプルな背景が、女性の心情を写し、色香を際立たせているようにも見える。こうした巧みな技を美人画に採り入れた歌麿は、一躍脚光を浴び、天明・寛政期(1781~1801)において美人画の名手として名をとどろかせた。

 本展では歌麿の作品をはじめ、浮世絵の百花繚乱ともいうべき時代の作品135点を紹介する。

(2020年3月3日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)