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「ワニのベンチ」

美術のなかのどうぶつたち(古川美術館)

2019年 樹脂・木
2019年 樹脂・木

 陶芸作家の父が作る動物が好きだった。彫刻家、鈴木紹陶武(つとむ)のモチーフは、一貫して動物だ。鈴木が作り出す動物はみな、木の家の中にいたり、胴体が木箱だったりする。

 ワニを題材に胴体を平屋の家で表現しようと考えていた矢先、動物園で後ろ足で立つように水中を漂うワニに遭遇。胴体部分の木箱に、ワニの後ろ足が浮く長さの脚を付けてベンチに変更した。細長い瞳孔の金色の目やウロコの質感、鋭い歯などリアルに作り込んであるが、どこか愛らしい。実際の胴体よりも長さを縮めて作った木箱や、ぶらんと脱力し、やや内向きの後ろ足がユーモラスだ。

 実物同様、後ろ足は4本指で薬指の爪がない。テーマの動物を決めると、東山動植物園や名古屋港水族館に通い、様々な角度からスケッチを繰り返し徹底的に観察。生態まで調べあげる。新鮮な驚きや意外な発見が造形のヒント。同じ姿を持つ種が二つとない動物に魅了されている。

(2020年6月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)