本展では、フィンランドを代表するセラミックアーティスト、ルート・ブリュック(1916~99)の初期の食器や陶板から後期のタイル作品まで約200点を紹介する。
美術学校でグラフィックを学んだブリュックが焼き物の知識を身につけたのは、42年にヘルシンキのアラビア製陶所に入ってから。入所直後は絵付けが中心だったが、周囲に刺激を受け、釉薬をかき落としたり、焼成時のひび割れを利用したりする技法を駆使した作品を生み出していく。
陶板「ライオンに化けたロバ」は、石膏の板に絵を彫り付け、水で溶いた粘土を流し込んでできる盛り上がった線で、ライオンの表情や足元に咲く花、腹部に見える黒っぽいロバの姿を描いている。方形ではなく、モチーフの輪郭そのままの形も特徴だ。
同じ頃、方形に教会を描いた陶板と、同じ教会の形を外縁とした陶板が残されていることから、「切り抜いた形の面白さに気づいたのでは」と学芸員の山口敦子さんは推測する。