フィンランドのセラミックアーティスト、ルート・ブリュックは教会やお気に入りの自然、母と子など身近なものをモチーフにしてきた。中でもチョウは、父がチョウ類の学者だったこともあり、親しい存在。父が亡くなった1957年には「蝶」の作品をシリーズで制作している。小皿大の作品数点を並べてつないだ「蝶たち」は、父が手がけた標本のようだ。父の研究を傍らで見ていた子どもの頃の思い出を表現したのだろうか。
チョウの周りに判子のように丸い模様が施された作品もあり、細かな仕事が見てとれる。「羽のグラデーション、背景とチョウの色、隣り合う作品同士の色の対比とバランス……。抜群のセンスです」と学芸員の山口敦子さん。父への思いが感じられると同時に、ブリュックがその後、タイルを組み合わせた大きな作品に取りかかることを予感させる作品でもある。