ルート・ブリュックは1960年代以降、白や黒、金色の小さなタイルを並べ、幾何学的な模様に仕上げた抽象的な作風に様変わりする。
レリーフのタイトル「スイスタモ」は、フィンランドから旧ソ連に割譲された土地の名。作品は白をベースに、色鮮やかな凹凸のあるタイルが連続する。中央には、凹部に釉薬がとろりとたまったようなタイル。同じパターンのタイル、色だけが違うタイル、凹凸が逆になったタイルが隣り合い、自然と目が追いかけるように発見がある。
学芸員の山口敦子さんは、素朴なモチーフから抽象的なデザインへの変貌に驚きもあるとしつつ、「個々のタイルのゆがんだ側面がレリーフに動きを与えている」と指摘する。窓の外を眺め、周囲の移り変わりをよく観察していたという逸話もある。「街や自然現象の移り変わりを、凹凸によって生じる光と影で表現したのかもしれません」