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「スイスタモ」

ルート・ブリュック 蝶(ちょう)の軌跡(岐阜県現代陶芸美術館)

1969年、70.5×70.5×5.3cm TWRB Foundation’s Collection / EMMA ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2531
1969年、70.5×70.5×5.3cm TWRB Foundation’s Collection / EMMA ©KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2531

 ルート・ブリュックは1960年代以降、白や黒、金色の小さなタイルを並べ、幾何学的な模様に仕上げた抽象的な作風に様変わりする。

 レリーフのタイトル「スイスタモ」は、フィンランドから旧ソ連に割譲された土地の名。作品は白をベースに、色鮮やかな凹凸のあるタイルが連続する。中央には、凹部に釉薬がとろりとたまったようなタイル。同じパターンのタイル、色だけが違うタイル、凹凸が逆になったタイルが隣り合い、自然と目が追いかけるように発見がある。

 学芸員の山口敦子さんは、素朴なモチーフから抽象的なデザインへの変貌に驚きもあるとしつつ、「個々のタイルのゆがんだ側面がレリーフに動きを与えている」と指摘する。窓の外を眺め、周囲の移り変わりをよく観察していたという逸話もある。「街や自然現象の移り変わりを、凹凸によって生じる光と影で表現したのかもしれません」

(2020年7月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)