フランス象徴主義を代表するオディロン・ルドンは、1890年ごろにその作風の転換期を迎える。
それまでは木炭画や版画で幅広い色調のモノクロ表現を基調としていたのが、油彩やパステルによる色彩表現を手がけるようになった。
題材も科学と空想を融合させたような生物から、内面を見つめるような神秘的な世界に移行した。
「眼をとじて」は90年以降、異なる画材で繰り返し取り組んだ画題で、本作は1900年以降に油彩で描かれた。
パステル画のようにほぼそのままの色を置いて着彩する手法や、周りの花々、構図などから、現実を超越した精神世界を表現したものと思われる。
インターネットが普及する現在、私たちが知る世界が広がると同時に、心の内側と対話する欲求も高まっているのだろうか。
内面世界を表現したルドンが、再び注目を集めている。