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「華佗骨刮関羽箭療治図(かだほねをけずりかんうのやきずをりょうじするのず)」

麻酔薬のあゆみと華岡青洲(内藤記念くすり博物館)

歌川国芳 1859年ごろ(部分)
歌川国芳 1859年ごろ(部分)

 片肌を脱ぎ碁盤をにらみながら、腕を突き出すヒゲの大男。その腕を切開する老人。毒矢で負傷した三国志の英雄・関羽が、曹操の侍医・華佗(かだ)の手術を受けている。

 歌川国芳が描いた「三国志演義」の一場面だ。日本でも江戸期に出版され人気があったこの小説で神業並みの手腕を持つとされる華佗だが、関羽を手術した記録はない。

 しかし華佗は実際に重病患者に開腹など外科手術を行ったという逸話が残る。「後漢書」方術列伝には、酒と薬を混ぜて飲ませ、意識がなくなったところを切開して病巣を取り除いたとの記載もある。

 医薬が未発達の時代、人々が痛みに対してできることには限りがあった。痛みに耐えることに価値を見いだす民族もあったようだが、麻酔薬の発展は「長い年月をかけた、人々の知恵の結集なのです」と内藤記念くすり博物館学芸員の稲垣裕美さんは語った。

(2020年9月29日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)