広正(ひろしょう)製陶の金型で作られたとみられるマジョリカタイルの一部は、今もインドに残る。今展では、インド美術史が専門の豊山亜希・近畿大准教授が現地で撮影した旧家や市街のタイルの写真も展示する。
豊山さんによると、英国の植民地だったインドでは当初英国製タイルが普及したが、独立の機運が高まると英国製品ボイコットが始まった。代わって輸出を伸ばしたのが広正製陶など日本のメーカーで、ピークの1930年代後半にはインドのタイル輸入の半分を日本製が占めたほどだった。
日本製はヒンドゥー教の神々の姿や神話の図像が正確に再現されている。当時人々の心をとらえていたヒンドゥー教の絵画の複製ポスターを、インド系商社を通じて入手できたためで、これも人気を得た一因とみられる。豊山さんは「日本製タイルは、独立後のインドで製造されるタイルの規範となり、タイル文化の布石にもなりました」と話す。