世界地図のど真ん中に名古屋。そこを基点に5大陸の国・都市へ四方に延びる線。和製マジョリカタイル製造の草分けの一つ、名古屋の「佐治タイル」が顧客向けに配った、自社販売網の絵はがきだ。
描いたのは、各地の鳥瞰図を作成した絵師・吉田初三郎。有名観光地の名所案内、鉄道沿線案内などを数多く手がけた当時の売れっ子だ。そんな吉田に顧客向けの絵はがき制作を依頼した点からも、東海地方を中心とするタイル産業の往時の勢いが分かる。
こうして盛んに輸出されたタイルは近年、再び注目されている。台湾・嘉義には専門の博物館が開館。シンガポールやマレーシアでは和製を含むマジョリカタイルが彩る邸宅が観光資源になっている。今展を企画した加藤郁美さんは「日本人観光客が複製品をお土産にする『逆輸入』も起こっています」と話す。