青色の地に黄色と白のジグザグ模様が映える。陶器にも見えるが実はガラス製。吹きガラスが発達する以前のコア技法で作られている。丸めた粘土の芯を金属棒の先に付け、素地となる色ガラスをかぶせた上に別の色ガラスを巻いて模様を施し、冷えて固まってから粘土をかき出す。高度な技術と時間を要した。
壺には油に香料を混ぜて香りを付けた香油を入れた。古代エジプト王ツタンカーメンの副葬品にも香油壺と香油が置かれていたように、古くから権力者や貴族たちは肌や髪に香油を付けた。高貴さの象徴であり、かぐわしい香りには空間や体を清める効果があると信じられたという。
「香料となる植物はアフリカや東南アジア産が多く、交易でもたらされる貴重品でした。高価な香油の入れ物として、凝った工芸品が作られたと考えられます」と、学芸員の高曽由子さんは話す。
本展は香水瓶や香道具など230点余りを紹介、太古から人々が持ち続ける香りへの思いを読みとく。