スイカズラの花からふわりと現れたような女性像は妖精だろうか。美しい曲線がやわらかな香りを思わせる。ふたには、向かい合う2匹のセミのレリーフが施されている。
ジュエリーデザイナーとして名をはせたルネ・ラリックは、40代後半にガラス工芸作家へと転向。当時、香水のラベルデザインに力を入れていたコティ社からの依頼で手掛けた香水瓶が「レフルール」だ。フランス語で花々を意味する。
学芸員の高曽由子さんは、「昆虫と花と女性像、ラリックが長く取り組んできたモチーフが全て入っています。凹凸を生かして付けた濃淡のぼかしも幻想的で、宝石からガラスへと転向する過渡期が感じられます」と話す。
紙ラベルを貼った香水瓶が主流だった時代に、商品の香りをイメージさせる芸術性の高いデザインは画期的だった。複雑な形のガラス瓶を安価に量産できる技法を考案した功績も大きい。生涯を通じて約400種類もの香水瓶を制作したラリックの記念碑的な作品の一つだという。