クラシックな黒の車体に日の丸。1957年、海外のラリーに初参加した日本車だ。
戦後間もなく、公用車やタクシー向けに開発された。輸出も視野に入れ始めたころ、豪州一周ラリーへの参加を政府から打診された。チャンスでもあるが、結果次第で海外戦略に影響しかねない。参戦は社内議論の末、決まった。
全長1万7千キロのコースは砂漠あり、岩場あり、湿地あり。2人のドライバー兼エンジニアと現地ナビゲーターの計3人が乗り、交換用部品や工具、水、食料などを積み込むと総質量は約1・7トンになった。それでも現在の軽乗用車の64馬力にも及ばない48馬力のエンジンで平均時速約90キロ、19日間で完走した。
ラリーやレースに参加し、車の研究開発に貢献した9台を紹介する今展。原点といえるこの車は、過酷な走行環境をほうふつとさせる砂利の上に展示されている。「悪条件下、大きなトラブルなく走りきったことは開発者の自信になったと思います」と副館長の増茂浩之さんは話した。