1998年のルマン24時間耐久レースに出場したトヨタGT―One(TS020)は、車体のあちこちに大きな通風口のある特異な形がファンや関係者らの目を引いた。
設計はトヨタ・チーム・ヨーロッパ所属のフランス人元レーサー、アンドレ・デ・コルタンツが担当した。フロントライトの下や前輪の内側に通気口を作り、前面パネルを伝った空気を車体下に流す。走行時の揚力を抑え、地面に押さえつけるダウンフォースを強化するための画期的な構造だった。
赤と白のグラフィックは、当時欧州駐在だった現トヨタ博物館長・布垣直昭さんの案だ。国旗の色を使った躍動感のあるデザインをと社内コンペに応募し採用された。
1台の車を3人のドライバーが交代で24時間運転、周回コースでの走行距離を競うルマンにトヨタが初参戦したのは85年。一時休止を経て2018年、20回目の挑戦で悲願の初優勝を果たした。コロナ禍の中、無観客で開かれた昨年も優勝を飾り3連覇。車作りのためのモータースポーツ挑戦は脈々と続いている。