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「カバと四羽の白い鳥」

ティンガティンガ絵画展(マコンデ美術館)

「カバと四羽の白い鳥」
「カバと四羽の白い鳥」 約60センチ四方

 胴体に比べて顔が大きく、カバにしては脚も長い。歯を食いしばるような口元が、どこか人間くさく見える。思い切ったデフォルメは、タンザニアのティンガティンガ絵画のお家芸だ。水野恒男館長も「漫画的でユニークな表現にほれ込みました」と話す。

 館の展示の核を成す、同じタンザニアのマコンデ彫刻も、体の一部や表情を強調するなどのデフォルメが特徴だ。材料となる黒檀の木のかたちに合わせてアイデアを膨らませ、自分の気持ちと一致したところで彫り上げるという。

 素材による制約を受けないティンガティンガ絵画にもデフォルメがみられるのは、「現地の人々にとって、大事な収入源だから」と水野館長。土産品として気に入ってもらえるかを重点的に考えた結果だと分析する。丸めて簡単に持ち帰れるように、布地に描いた作品も売られている。「生活の糧」としての工夫が、芸術性を大きく発展させたようだ。

(2021年1月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)