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「蛇使いとワニ」

ティンガティンガ絵画展(マコンデ美術館)

「蛇使いとワニ」
「蛇使いとワニ」 約60センチ四方

 ワニを押さえつける半人半獣のような奇妙な生き物は、タンザニアで信じられている精霊「シェタニ」。「サタン(悪魔)に語源をもつとされ、人や動物、怪物と自在に姿を変えると言われています」と水野恒男館長が解説する。ティンガティンガ絵画の画家たちは、夢で見た恐ろしい出来事や身に降りかかる災いを、シェタニの姿を借りてそれぞれの表現で描いているのだという。

 現地では今も祈祷師が信じられ、絵画のモチーフにされることも多い。本作のシェタニにも、祈祷師がつける動物の角の装身具が見られる。両耳にぶら下がるヒョウタンも、祈祷師がよく薬入れに使う道具だという。

 ヘビが身を乗り出した耳、鋭い爪の手足などは異様だが、口を半開きにした表情はどこか憎めない。水野館長は「シェタニは人を困らせる一方、気まぐれに人を助けることもあるんです」。混じり合う畏怖と好意が、絵にも表現されている。

(2021年1月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)