西浦焼の代表的な表現技法である「釉下彩」は、透明な釉薬の下に模様を施す。型紙の上からスプレーなどで絵の具を吹き付け、色の数だけ繰り返す。筆だけで描くのとは異なるおぼろげで柔らかな雰囲気が特徴だ。
ロイヤルコペンハーゲンなど欧米の陶磁器メーカーが研究を重ねて開発。5代目西浦圓治(1856~1914)のころ、欧米の万博に視察員を送るなどして採り入れた。
5代目当時の制作と思われる本作は、持ち手の意匠や流線形の本体、植物がモチーフとなっている点などがアールヌーボー様式を反映しているという。世界の流行がジャポニスムからアールヌーボーへと移り変わる流れも、5代目圓治は敏感にとらえていた。
学芸員の岩城鮎美さんは「身近なイチョウの葉をモチーフにした点や大胆な構図が日本的。アールヌーボーと融合させたのがおもしろい」と話す。和洋が影響しあう時代の中で西浦焼は発展した。