すずりに水を差すための「水滴」。筆と墨の時代には必需品だったが、筆記用具の変化や安価で手軽なスポイトの普及で姿を消した。今展では名古屋市の大島国康さんが寄贈した千点以上の中から約300点の水滴を紹介する。
本作は、国内で陶製水滴の量産が始まったとみられる中世の瀬戸の産。鉄釉の発色が安定しなかった時代にあって、つややかな発色だ。上から見るとハスの花の装飾が施されている。
小さなミカン大で、実際に見ると小ささに驚く。瀬戸でろくろが使われるようになって間もないころで、「こんなに小さいものをろくろで作れるのは相当な技術だったと思います」と主任学芸員の小川裕紀さんは話す。さらに「注ぎ口が水平に切られているため水切れがよく、底に水が回りません」と実用性も折り紙付きだ。