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色絵招き猫担ぎ童子形水滴

水滴 小さき陶芸 大島国康コレクションを中心に(愛知県陶磁美術館)

有田 20世紀 高さ7.2センチ
有田 20世紀 高さ7.2センチ

 水を入れる本来の役目よりも、今でいうフィギュアのような要素が強くなった水滴もある。すでに桃山時代ごろには猿や牛、スズメなどの形が作られ、中にはほとんど水が入らないものも。

 戦前の有田産と思われる本作は、鋳込み成型で前面と背面を貼り合わせてある。つなぎ目にはみ出した粘土が残り、底には穴が開いた不良品だが、主任学芸員の小川裕紀さんは「童子の産毛の繊細さ、目や口元の柔和な表情が伝わる筆遣いで、背面まで丁寧に彩色されています」と話す。

 当時はやった射的場の的や、開店祝いなどの引き出物としたのか、様々な陶産地で類似のものが作られ、広く流通した。七福神や招き猫といった縁起物のモチーフが多いという。

 量産型の水滴が作られたのはこのころが最後で、以降は安価で手軽なスポイトに取って代わられた。

(2021年8月31日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)