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イル・サンルイの秋

色彩画家のヨーロッパ紀行(一宮市三岸節子記念美術館)

一宮市三岸節子記念美術館蔵©MIGISHI
一宮市三岸節子記念美術館蔵©MIGISHI

 三岸節子がパリ・セーヌ川に浮かぶサンルイ島を描いた本作。画面中央のオレンジがかった黄色が、細いグレーの帯のような川の向こうに見える島の紅葉だ。下部の黒い曲線は欄干だろうか。後景に並ぶ白い建物は、中州である島をはさんで向こう岸になる。

 2度目の欧州滞在中にパリで開いた個展で高い評価を得た節子。欧州での活動にさらなる意欲を燃やし、帰国の予定を変更してブルゴーニュに家を購入した。

 その後はブルゴーニュ、パリの風景をテーマに2度の個展を準備。各地でスケッチを重ねたが、パリでは油彩作品になる場所は多くなかった。自らを「色彩の画家」と呼んだ節子は、構図にもこだわった。

 学芸員の大村菜生さんは、学生時代に訪れたパリで目にした景色を思い出したという。「節子が描きたかったのは対岸の街並みだったのでは」。大胆な構図の中に、節子が好んだパリのモノトーンの街が存在感を放っている。

(2021年9月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)