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小さな町(アンダルシア)

色彩画家のヨーロッパ紀行(一宮市三岸節子記念美術館)

1987年 一宮市三岸節子記念美術館蔵©MIGISHI
1987年 一宮市三岸節子記念美術館蔵©MIGISHI

 町をとりまく坂道から見える、白い壁に素焼きの赤い瓦屋根の家々。乾燥した空気や建物のざらりとした質感が表現されている。

 1968年、63歳で再び渡欧した三岸節子の滞在は約20年に及んだ。その間に出会ったスペイン・アンダルシア地方の風景をよほど気に入ったのか、色や構図、表現を変えて何枚もこの町の油絵を描いている。

 54年の最初の欧州滞在で、周遊中にどこかで目にした「白い家」が忘れられなかったという。伝統的な町並みを探してあちこちを旅し、やっと見つけた風景だった。

 幼い頃から股関節脱臼症を患い足が悪かった節子。静物画を多く描きながらも、各地を旅して風景画を描くことへの憧れがあったのでは、と学芸員の大村菜生さんは話す。

 湿度の高い日本よりも油彩に合うと、欧州の風景を求めた。「やっと思い通りの風景に出会えた」とつぶやいたのがこの景色だった。

(2021年9月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)