かわいらしくユーモラスなトラ。「東の魯山人、西の半泥子」とも称された陶芸家、川喜田半泥子(1878~1963)の作品だ。
伊勢の豪商の家に生まれた半泥子は百五銀行(本店・津市)頭取などを務めながら書画や茶の湯をたしなみ、特に陶芸は自宅に窯を築くほどのめり込み、主に茶陶を制作した。また文化事業を支援し、後に石水博物館の母体となる財団を設立した。
寅年生まれで、中でも強運とされる「五黄の寅」であるのを誇りにしていたという。72歳の五黄の寅年に描かれた本作は、江戸時代の禅僧・仙厓義梵の「虎図」の影響を受けている。学芸員の桐田貴史さん(27)は「若い頃から禅を学んだ半泥子は仙厓の禅画に心動かされるものがあったのでしょう」。
迎える2022年は36年に一度の五黄の寅。本展は川喜田家の収集品や半泥子の作品から、トラや干支にかかわる作品を紹介する。