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花(アネモネ)

花咲く絵画 いのちのささやき(刈谷市美術館)

中村正義 1962年
中村正義 1962年

 蛍光色のポップアートのような花を描いたのは「日本画壇の風雲児」。愛知県豊橋市生まれの中村正義(1924~77)だ。

 日本画壇の重鎮・中村岳陵の画塾に入門、22歳で日展初入選。30代で日展審査員となるが、まもなく脱退した。

 その翌年に描かれた本作は「反骨精神や新たな挑戦への気概が満ちあふれている」と学芸員の古池幸代さんは話す。アクリル絵の具や接着剤を用いたり、原色を試してみたり、試行を重ねながら新しい日本画を模索した。

 幼い頃から病弱で、結核やがんを患った中村は、療養や闘病で思うように制作できない時期もあった。

 いつ死ぬかわからないから自分に対して純粋でありたい。52歳で人生を終えた画家の作品にはそんな焦燥感が反映されている、と古池さんは見る。「おまえはどうなんだ? と問われているような、そんなザワザワとした気持ちにさせられます」

(2022年2月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)