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「手向山八幡宮立絵馬」

新収蔵品展(豊田市民芸館)

縦14.5×横29センチ
縦14.5×横29センチ

 神社の絵馬といえば五角形などの板で、願い事を書いて奉納するのが一般的。だが奈良市の手向山八幡宮で授与される立絵馬は、名前の通り馬の形を模し、縁起物として持ち帰られる。

 木の板の両面に胡粉を塗り、泥絵の具でたてがみや尾、飾り馬具などが描かれている。馬のモデルは祭神である応神天皇が愛したという「あつふさ」。馬具は八幡宮所蔵の国宝「唐鞍」からのデザインで、明治期から変わっていない。本作はコレクターが昭和期に収集した。

 東大寺鎮護のため8世紀に創建された八幡宮には当初、晴天を祈るときは白い馬、雨乞いには黒い馬を奉納する習俗があった。鎌倉時代以降、板や紙に描いた馬が代用されるようになり、さらに変化して現在の形になったといわれる。

 学芸員の岩間千秋さんは「素朴な馬の形に彩色の美しさ。現代でも新鮮なデザインです」と話す。

(2022年3月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)