柔らかな日差しをうけながら、楽譜帳を手にベンチに腰掛ける男女。イタリアの作曲家ジュゼッペ・ベルディと2番目の妻で元オペラ歌手のジュゼッピーナだ。
背景に広がるのは邸の広大な敷地。最初の妻や子を次々と失った後に移り住んだ北イタリア郊外と思われる。
本作を手がけた洋画家・芝田米三(1926~2006)は、スペインのサグラダ・ファミリア教会とその設計者ガウディを描いた1992年の作品以降、歴史上の著名人をゆかりの深い場所とともに多く描いた。制作にあたっては人物像を丹念に調べ、現地を実際に訪れたという。
80年代には雑誌「婦人公論」の表紙を飾るなど芝田は多くの女性像を描き、そのモデルの多くは妻の藤子さんだったともいわれる。「献納の際もご一緒にお越しになり、仲むつまじいご様子でした」と学芸員の中村潔さんは話す。