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友禅訪問着「菱の葉文様」

和の饗宴 神宮美術館アーカイブス(式年遷宮記念神宮美術館)

森口邦彦 身丈164.0×裄(ゆき)66.5センチ
森口邦彦 身丈164.0×裄(ゆき)66.5センチ

 万華鏡をのぞき込んだような「菱の葉文様」の訪問着は友禅染の人間国宝・森口邦彦が手がけたものだ。

 規則的に見えるが六角形の柄の色、形は一つ一つ違う。肩から胸のあたりは余白を楽しむようにゆったりと配置。帯を締める部分の柄は小さめに、足元に向けて大きく華やかになる。学芸員の中村潔さんは「緻密に計算され、メリハリと動きが感じられます。実際に着用したらさらに見応えがあるでしょう」。

 同じく友禅染の人間国宝だった華弘を父に持つ邦彦は20代のころパリに留学、グラフィックデザインを学んだ。そのままフランスでデザインに従事するつもりが、画家バルテュスのアドバイスもあって帰国。父のもとで蒔糊や糸目糊といった技法を習得した。

 絵画のような具象表現を得意とした華弘に対し、邦彦は一貫して抽象的な幾何学文様に取り組んできた。斬新なデザインは三越のショッピングバッグにも採用されている。

(2022年3月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)