ゴツゴツしたヒトの背骨のような、虫に食われた果実の残骸のような。個性的な陶作品の作者、西澤伊智朗は1959年生まれ。青春時代は柔道に打ち込み、大学卒業後に故郷の長野で体育教員となった。
2カ所目に赴任した特別支援学校の授業で生徒とともに粘土をこねるうち、焼きものが「自分自身を映し出す」予感がした。教員の研修制度を利用し京都の大学で1年間陶芸を学んだ。長野に戻り、教職のかたわら自分の「表現」を模索する日々が続いた。
あるとき、アンモナイトの化石に着想を得て制作していた作品を素焼きの後に落として割ってしまった。あきらめきれず釉薬をかけ、土をまぶして焼いたところ、大地の割れ目を思わせるヒビが現れ、「自分の求めるものに近い」と感じた。
西澤にとって作品は「吐く息、排泄物のようなもの」。止めることも我慢することもできないという。