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壁紙デザイン「アーティチョーク」

交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー(豊田市美術館)

アトリエ・マルティーヌ 1912年 縦79×横71.5センチ パリ装飾美術館蔵
アトリエ・マルティーヌ 1912年 縦79×横71.5センチ パリ装飾美術館蔵

 西洋野菜がモチーフの壁紙のデザイン画。素朴な筆跡は、作者の若さゆえか。

 作者名はわかっていない。20世紀初めに活躍したフランスのファッションデザイナー、ポール・ポワレ(1879~1944)がパリに設立した工房「マルティーヌ」でデザインを学んだ12~17歳の女生徒の作品だ。

 ポワレは工房設立にあたってオーストリアの「ウィーン工房」を手本にした。1903年に建築家ヨーゼフ・ホフマンらが設立、インテリア、家具、服飾品などのデザインを行った。ポワレは10年にウィーン工房を訪れ、翌年マルティーヌを始動させた。

 ポワレはウィーン工房の生地を洋服に仕立て、工房もまたポワレのデザインに似たドレスを発表するなど、両者の交流は円満に続いたという。

 第1次大戦後の「戦間期」を中心に本格化したドイツの機能主義、フランスのアール・デコ。本展では、消費社会の進展を背景に共鳴しながら時代をなした「モダン」の様相を紹介する。

(2022年6月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)