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絵画、オブジェ、ティッシュ・シミュルタネ、モード

交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー(豊田市美術館)

ソニア・ドローネ- 1925年 ポショワール(ステンシル) 縦38×横57センチ<br /> 島根県立石見美術館蔵
ソニア・ドローネ- 1925年 ポショワール(ステンシル) 縦38×横57センチ
 島根県立石見美術館蔵

 現在のウクライナ出身の画家ソニア・ドローネー(1885~1979)の作品集に収められた本作は、抽象画とも洋服のデザイン画ともいえる。

 そうした多面性を示すような作品名の中の「ティッシュ・シミュルタネ」は、「同時主義のテキスタイル(織物)」といった意味だ。

 夫は抽象絵画の先駆者とも言われるロベール・ドローネー。夫婦はともに、様々な色面の構成によって一つの画面に時間性を導入しようとする「同時主義絵画」を提示した。

 ソニアは息子の誕生をきっかけに身の回りのものを布で作った。その後テキスタイルや服飾を手がけるようになり、主にパリを拠点に舞台や映画の衣装をデザインしたり店舗を開いて商品を販売したりした。

 「布の状態では抽象的に見える形が、人が身にまとうことで身体と結びついた具体的で手応えのあるものになる。抽象なのに具体的。そこに絵画以上の可能性を感じたのではないか」と、学芸員の千葉真智子さんは話す。

(2022年6月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)