鳥のように羽を広げた「応龍」を、唐草紋が取り巻く。勢いのある筆致と色鮮やかな絵付けが特徴の乳白色の陶板は、京都・西本願寺の経蔵内部の壁に張られたのと同種のものだ。
経蔵には装飾として、長い胴が円を描く「団龍」と共に2種計312枚が用いられている。陶板の裏には四隅と中央に穴のあいた高台があり、木製の枠に釘で打ち付けたり、銅線を通したりして壁面に固定されている。裏面には作者・土肥源左衛門の名と、寄進者らしい名前がある。
本作の裏面には作者や寄進者の名が入っていない。「予備でつくられたものが残り、伝わったとみられています」と学芸員の立花嘉乃さんは話す。
6世紀に仏教とともに伝わった瓦は、次第に床や壁にも使われるようになった。敷瓦、腰瓦などと呼ばれた陶磁器製建築材の呼称がタイルと統一されたのは1922年。今展では日本のタイルの源流を訪ね、100年の歩みを振り返る。